先日、支援学校の見学に行ってきた。その学校は実家の近くにあって、ぼくが子どもの頃は養護学校と呼ばれていた。建物はその頃とほとんど変わっていないように見える。老朽化がすすんでいるので、もうすぐ建て替え工事がはじまるらしい。
車で校門をくぐると、職員の人があちこちに立っていて、奥へ奥へと誘導される。いつも前を通りかかるだけなのでわからなかったが、中は意外と広い。校舎の周りをゆっくり走って行くと、いちばん奥に中ぐらいの大きさの運動場があって、そこに車を停めた。運動場の周りには竹がまばらに生えている。敷地外からは全く見えないせいか、とても静かで寂しい感じのするところだった。
娘を車椅子に乗せて説明会がある体育館に向かう。体育館にはすでにたくさんの人が集まっていたが、子どもを連れている人は誰もいなかった。そしてぼくらには市役所の担当の人が一緒に来てくれていたのだが、それもぼくらだけだった。みんな保育園か幼稚園に子どもを預けているのだろうか。
はじめに校長先生の話。マイクの音量が小さいのか、ほとんど何も聞こえない。仕方がないので、喋っている顔の表情ばかり見ていた。いい人そうなのはわかった。
つぎに学校案内の映像を見て、その後、質疑応答の時間があったが誰も質問をしなかった。説明会はそれで終わりだった。説明会の後に別室で個別の相談会が開かれるらしく、どうやらそっちがこの見学会のメインのようだだった。
「何か聞いておきたいことはないですか?」と市役所の人が妻に聞くと、妻は「とくに何も思い浮かばないです」と小学生みたいな返事をした。
相談会に行くべきか迷っていると、いつのまにか女の先生が五人ほどやって来て、娘の顔をのぞきこんだりした。女の先生たちはみんな驚くほどに愛想がよく、いい人そうに見えた。何か質問はないかとまた聞かれた。妻は突然いろいろと質問しはじめた。お父さんは?と言われてぼくも何とかひとつだけ聞けた。そのうちまた五人ほどの女の先生がやってきて、ぼくらの周りを囲む形になった。その間、娘はずっと顔を伏せていた。