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矩計日記 
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あわわん
朝起きるとものすごい雨と雷だったが、出掛ける時間には雨もあがる。下鴨古本まつりに行くのはやめて大阪へ行く。どんよりとした気分で電車に乗って帰ってくる。まだ昼すぎ。昼寝をした。下鴨に二日続けて行って疲れていたのか三時間ほど寝てしまった。ぼおっとした頭で、あわわんのことを思い出す。下鴨で買って気になっていた詩集があったのだ。
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長谷川進『あわわん』(私家版、昭和四十九年九月十日)。

  仲秋の名月

でもまあなんとしたことだ
こんな夜の夜中に
目覚めてあるのは

とんとんとんと乾物屋の雨戸をたたくと
猫みたいな婆さんが出て来て
「へい おあいにくさまです
あの子はさっき
死んじまったです

今夜は仲秋の名月
せめてかわいい坊やが死んだ時にや
月なと明るくあっとくれ
いつもわめきちらす下宿の犬も
今はもう静かに寝ているようだ
今夜くらいは歯ぐきを出して吠えるのはよして
おとなしく寝入っているものなのだ
それが世の中の仁義というものだ

ポストに手紙を入れる
あわわんと口を開けたポストに
分厚い手紙をぼとと入れる
弔辞

こんな夜の夜中に
あわわんと口を開けているのは
ポストと
僕の体のどっかだ

この建設予定地のだだっ広い高台には
ペンペン草が生えている
長いやつを一本ひっこぬいて
ギターのようにかき鳴らしや
ペンペンと音がするのだろうか
ペンペン草


初日によくわからないままに買った一冊。はじめて聞く名前の詩人だと思っていたが、河野仁昭『戦後京都の詩人たち』(編集工房ノア)の「『ノッポとチビ』の仲間たち  新しい世代の台頭」を読み返すとやはり出てくる。

長谷川進は黒瀬勝巳と高校の同級生で、昭和四十一年に『刹那』という同人雑誌を黒瀬勝巳、岡本健次郎らの三人で出した。『ノッポとチビ』には三十六号(昭和四十四年)から参加。昭和五十年には、黒瀬勝巳、松谷毅らと『艪』を創刊とある。

《神戸の外国語大学から宮大工に転じた変わり種の長谷川は、工事のトラックで例会の席へ乗りつけてきたりして、わたしたちを驚かした。修学院の黒瀬の家は、長谷川が建てたものであった。一階は一部屋だけで、玄関を入ると奥まで見えてしまう風変りな家だったが、黒瀬は気に入っているふうであった。》

『戦後京都の詩人たち』の黒瀬勝巳について書かれたところは何度か読み返していたのに、ほとんど頭に残っていなかった。ネットでも調べてみると、あるブログに、長谷川は京都のライブハウス拾得をヒッピーたちを集めて造った、と書かれていて驚いた。
by kanabakari | 2012-08-14 01:23 | | Comments(0)
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