ブログトップ
矩計日記 
kanabaka.exblog.jp
若き日の旅
d0160921_23584198.jpg

d0160921_21592556.jpg

 里見弴『若き日の旅』(甲鳥書林・昭和15年)。
 
 明治四十一年の春に、志賀直哉、木下利玄、里見弴の三人は上方方面へ旅行をする。当時、木下利玄と里見弴はまだ学生で、年長の志賀直哉が二十六歳である。『白樺』が創刊される二年前のこと。みんな若い。
 そのときのことを里見弴がふりかえり綴った紀行文だが、「純粋な紀行とも云へない、多少潤色を加へた物語」だと著者はいう。その潤色がよく効いているのか、全然古臭くなく声を出して笑えるほどに面白かった。とりわけ三人の会話がすばらしい。芝居のせりふをまじえたやりとりは、なんとも暢気だ。仲間うちにだけわかる言いまわしを嬉しそうに飛ばしあったり、どうでもいいようなことをああだこうだと言いあっている様子はまるで落語のようで楽しい。里見弴も楽しみながら書いたのではないだろうか。
 
[PR]
by kanabakari | 2010-07-26 00:03 | | Comments(0)
<< 夏の町 本棚の前の本 >>