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矩計日記 
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本棚の前の本
 善行堂に行った。店内には買取の本が入った段ボール箱がたくさんあった。重たそうな段ボール箱が、とりあえずといった感じで積まれている。箱の上にもさらに本が積まれて、きわどいバランスを静かに保っている。ここに積まれた本は、いつ本棚に並ぶのだろう。整理がたいへんでしょうと店主の山本さんに聞くと、「そうなんや」と言いつつも、それほどお困りではない様子。まあ、古本屋に本が集まってくるのは当然のことか。それにこの程度の量だったら、べつにどうってことないのだろう。
 それより自分の部屋のアレはなんとかならないものか。
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 ストーブはそろそろ片付けたほうがいいかな・・・・・・。
 
 いつものように本棚をゆっくりみていると、野口冨士男がまた入ってきたんだけどという声にハッとする。野口冨士男は今、一番読みたい作家のひとりだ。『風のない日々』(文藝春秋)と『しあわせ』(講談社)の二冊を手渡してくださる。帯にある「昭和初年の一小市民の生活風俗を描いたリアリズム小説」という言葉に惹かれたので、『風のない日々』のほうをわけていただくことにした。
 再び本棚をじっくりとみていると、「これなんかどう?」という山本さんの手には庄野潤三の『文学交友録』(新潮社)が。きのう、『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』を読み終えたところだったのですこし驚いた。なんだか心の中を読まれているみたいだ。面白そうですねぇというと、「こんなん好きなんやろ?だんだんわかってきた」とおっしゃった。わかってたんですね、やっぱり・・・・・・。
 しかし、この本、既視感たっぷりなのはどういうわけか。このまえ大阪で買ったのかな。うーん、思い出せない。しかたがないので、なんとなく本棚をみるふりをしながら山本さんに背を向け、ゴソゴソと鞄の中から手帳を取りだして、こっそり確認。該当品ナシ。よし、買おう。
 その『文学交友録』の帯をみると「初めての文学的自叙伝」とあり、著者と交友のあった作家たちの名前があげられていた。そのなかの伊藤静雄の名前をみて急に思い出し、「そういえば伊藤静雄のことを書いた小説がありましたよね?題名が思い出せないんですけど」というと、「ああ、あった、あった、えーっと『前途』やったかな」と山本さん。そして奥の机にうず高く積まれた本の中から、ひょいと一冊抜きだされたのが『前途』。このやりとり、一分も経っていなかったのではないだろうか。
 「こうやってなんでもでてくるところがスゴイけどな」とご自分でおっしゃるのが可笑しい。でも、本当になんでもでてくる古本屋さんだ。そして、すぐにでてくるところがスゴイ。この速さは、山本さんが古本屋で本を見つけるときの速さと似ているように思う。

 
 
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by kanabakari | 2010-07-19 21:13 | | Comments(0)
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