外が暖かそうなので、午後から三人で散歩がてら初詣に行く。
競輪場の裏の道を抜けて神社の石段のところまで来ると、石段の途中から行列になっているのが見えた。
とりあえず列の最後尾に並んでみるがほとんど動かない。自分だけ列から離れて上の様子を見に行くと、予想していたより五倍ほど長い行列が本殿の方まで続いている。小銭を放り投げてガラガラ鳴らすだけなのによく耐えられるもんだ。石段のところは真ん中がスロープみたいに段差のない坂になっているので車椅子でも行けるが、本殿にたどり着くまでには何カ所か階段があるのでどちらにしても無理そうだ。
妻と娘がいるところまで戻って事情を説明する。今度は三人とも列から離れて再び上を目指す。なんとなく並んでいる人たちの視線を感じながら長い坂を登り切る。
おみくじだけ引いて帰ろうと妻に言うと、御守りもほしいとのこと。砂利道の上を車椅子を押していくのは大変なので妻と交代でおみくじを引きに行く。
四十五番の吉。どの項目も控えめにしろと書かれていてつまらない。訴訟は起こしてもいいらしい。
妻は千円もする御守りを買ってきた。病気平癒のその御守りを車椅子のフレームにさっそく取り付けている。
娘の顔をのぞくと、スピーカーから流れている音の悪い雅楽が怖いようで、ずっと手で顔を隠している。
帰り道、御守りってやっぱり効き目があるんかなと妻が聞いてくるので、あるわけないやろと返答する。
きのうの地震の後、もし何か災害があったら車椅子押してどうやって逃げたらいいのかと聞いてきたときは、「どうしようもない、真っ先に死んでいくんや」と返答した。